『仏祖の家常は喫茶喫飯のみなり。』
(「正法眼蔵」家常(かじょう)より)
お茶を飲んだり食事をしたりということは、日常生活の中ではごく当たり前の出来事ですが、そこにこそお釈迦様や祖師たちが伝えて来た仏法の尊さが宿るという教えです。
曹洞宗は鎌倉時代に道元禅師によって中国から日本に伝えられ、瑩山禅師によって日本全国へ広められました。その教えは坐禅に象徴されますが、日常生活の歩く、とどまる、座る、寝るというようなあらゆる行為(行住坐臥/ぎょうじゅうざが)を禅の実践と捉えています。
道元禅師が24歳だった1223年に中国へ留学し修行を行ないますが、中国で紅茶(発酵茶)の製造技術が確立したのが宋時代(960年〜1279年)だと考えられています。現在知られているような紅茶の文化自体は17世紀初頭、オランダの東インド会社が中国からヨーロッパへお茶をもたらして以降のことですが、道元禅師もその紅茶の原型を見聞きしたのか、飲んだのか、そこの所は不明です。
ここでは、紅茶の調理特性について、その正体を見て行こうと思います。
・テアフラビンは紅茶に含まれるポリフェノールの一種で、紅茶の特徴的な色と風味を作り出す主要な成分です。
紅茶の製造過程で、茶葉に含まれるカテキンが酸化酵素によって発酵する際に生成されます。
この酸化発酵の度合いによって、紅茶の色や香りが大きく変化し、酸性に傾くと無色になる特性を持っています。レモンを入れると、レモンに含まれるクエン酸に反応し、紅茶の色が薄くなります。
・紅茶のクリームダウンは、アイスティーを作る時にみられる現象です。
熱い紅茶を冷却する際に、温度が下がるにつれ、紅茶の主成分であるタンニン(より正確にはポリフェノールの一種であるテアフラビンなど)とカフェインが結合することで、白く濁り、白っぽいクリーム状の沈殿物が生じる現象です。これは冷水に溶けにくい複合体を形成するために起こります。特にテアフラビンの含有量が多い紅茶(アッサムなど)で起こりやすい傾向があるようです。
急冷することで、クリームダウンを防ぐことができます。
・紅茶は、沸騰直後のお湯を使用します。
ぬるかったり、熱すぎたりすると、紅茶の香気成分がよく出ないためです。
また、沸騰した湯であれば対流し、茶葉がポットの中でよく動くので、美味しい紅茶をいれることができます。
蒸らし時間は、小さな茶葉で約2~3分、大きな茶葉で約4分が目安です。
・紅茶は、茶葉が持つ酸化酵素の働きを利用して発酵させて作られるお茶であり、発酵茶に分類されます。
お茶の製造における「発酵」とは、微生物による発酵とは異なり、茶葉に含まれるカテキンなどのポリフェノールが、茶葉自身の酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ)による酸化反応によって複数の分子が結合し、より大きな高分子を形成する化学反応のことを指します。
不発酵茶:茶葉を発酵させないで作ったお茶(緑茶など)
半発酵茶:発酵を途中で止めて作ったお茶(ウーロン茶など)
発酵茶:茶葉を完全に発酵させたお茶(紅茶など)